『 宴会 』



それを偶然というには出来すぎている。江戸にどれだけの飲み屋があると思っているのだろうか。
偶然同じ居酒屋に入って、偶然お互いの連れが酔いつぶれて、偶然席が隣だなんて、もう運命だと思っても仕方ないじゃないか。
「おーい、土方ー。お前まで酔いつぶれんなよ?銀さん寂しいだろー。」
酔うと絡み酒な銀時が、しなだれかかってきたのを押し返しながら、密かにときめいていたのを気取られないように必死だった。
「俺よりお前の方が先に酔いつぶれそうだけどな。」
「ん?土方君も寂しい?」
「んなこと言ってねー!」
「照れんなって。」
ん?と顔を近づけられて、思わず押し黙る。
「ち、ちけーよ。」
「このまま、ちゅーしちゃおうか。」
「ばっ、ざけんなっ。」
そう言うと、銀時はスッと体を離して静かに笑う。その仕草が妙に色っぽくて、つい目離せなくなった。
「いや?」
「……ここ、居酒屋だし、他に客もいる。」
「誰も見てないって。……それに、こういうスリル好きなくせに。」
「人を変態みたいに言うな。」
「でも、好きでしょ?」
「好きじゃない……」
そう言った瞬間、素早く唇を奪われる。
「っ……てめぇ……」
「奪っちゃった。」
手で狐を作って、唇にちょんとくっつけられた。
「はぁー、もう好きにしろ。」
「んー、じゃあ……」
「!?」
いきなり足を撫でられて、悲鳴を上げそうになった。
「好きにするから。」
「いやいやいや、それはダメだろ!」
「何が?」
「何って、んっ……」
エスカレートしていく手つきに、隣の銀髪を睨み付けた。
「声だしたらバレちゃうよ?」
「んっぁ……むりっ……」
「この程度で降参なんて、鬼の副長の名がなくぜ?」
「っ、てめぇ……」
睨みをきかせたつもりなのに、銀時に鼻で笑われて終わる。
「それ、誘ってるの?」
思いがけず、サド心に火をつけてしまったようで、ゾクリと悪寒が走った。
「ちがっ、ぁあっ……」
「ほんと、素直じゃねーよな、お前。」
「お前が、こんなこと、ばっか……するから……」
「俺のせいだって言うんだ?」
「他に何があるっ……」
負けじと口の端を吊り上げるも、ぎこちなさが残る。
「へー……そんな口きけなくしてやるよ。」
そう言って舌舐めずりをした銀時は、間髪を入れずに着物の中に手を入れてきた。
「んっ……」
今まで布越しだった刺激が、比べ物にならないほど強いものに変わる。
嫌だと思っているのに反応してしまう身体を恨めしく思いながら、周りにバレないように声を押し殺すしかなかった。



とりあえず、おわる。





※この文はブログで書いたものに、ほんの少し加筆したものです。



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